SilentSpring

3rd写真展「 Silent Spring 」
2011年春この特別な季節をフィルムにおさめようと決めた 恐怖の中美しく眩しく凶暴でそしてとても静かな春

2011年6月@ans gallery

写真展「 Silent Spring 」について:

この度は、写真展「 Silent Spring 」にお越し頂きありがとうございます。
今回の写真展は”2011年の春”をテーマにした展示となります。

この2011年春というのは、私たち日本人にとって、そして世界中の多くの人にとっても
間違いなく忘れることの出来ない特別な季節となるでしょう。

今年の311日に起こった東日本大震災はいま現在死者・行方不明者合わせて25千人、
建物被害は全壊・半壊合わせて12万戸、今なお10万人以上が避難生活を送っており、
被害総額は少なくとも16兆円にのぼり、また復興に今後何年も何十年もかかると言われています。
そしてなにより地震に起因した原発事故はいまだ解決の目処が立たず、
現在進行中の未曾有の災害として、目に見えぬ恐怖として私たちに重くのしかかっています。

そのような重苦しい状況の中で満開に咲く桜を目にしたとき何故かこれまでと違う印象を受けました。
咲き誇る桜、伸び上がる新緑の木々は、いままで以上に美しく、眩しく見えるとともに、
同時にそれはとても暴力的で、危険な光を帯びているようにも見えました。

その時、頭の中でこの春の撮影イメージがはっきりと見えました。
桜の花びらや新緑の緑、降り注ぐ光を放射性物質に見立て、恐怖の中でこそ強く感じる自然の美しさや眩しさを、
いつもよりハイコントラスト、いつもより粒状感のあるプリントで表そうと。

そこからは、撮影はわずか10時間、フィルムにして13本程度で一つのかたちとなりました。
被写体との向き合い方、暗室でのプリント再現の仕方、どちらも迷いのない中での作業となりました。
過去2度の個展と比較しても、テーマの困難さを感じつつも一番スムーズだったと言えるかもしれません。

写真展タイトル”Silent Spring”は、化学物質や放射能による環境汚染の危険性を訴えた
レイチェルカーソンの著書「 沈黙の春 」から来ています。
なお、今回の展示は、むやみに恐怖を煽るものでも、また政治的な意見を示すためのものでもありません。
ただ現在起こっている事象をしっかり見詰めること、写真だから表現できることを私の手でカタチにしたものです。

作品形態:モノクローム ゼラチンシルバープリント バライタ大四切(11×14インチ) 額装20点前後